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『運命の逆転』のバーベット・シュローダーで、レオポルド&ローブ事件を題材にしたものなので、もっとデカダンなヤツを期待したんだけどな……。レオポルド&ローブ事件は、1920年代にアメリカで実際に起きた殺人事件。ニーチェ思想の影響を受けた二人の青年…
傑作。今年のベスト級。レンタルで観たのだがDVDを買いたくなった。そして友人知人に薦めたい。僕はこういう素晴らしい映画が製作されるアメリカを嫌いになることは決してないだろう。舞台はニューヨークのイタリアン・レストラン『ジジーノ』。物語はそのレ…
観終った後、冷静に考えれば、ちょっと荒唐無稽だったり、ラストが唐突だったりとケチを付けたくなるが、観ている最中は、逆転、また逆転のコンゲームに有無を言わさず引き込まれていた。さすがは『郵便配達夫は二度ベルを鳴らす』や『アンタッチャブル』の…
グラハム・スウィフトの小説を映画化した文芸もの。外枠としては、ジェレミー・アイアンズ演じる高校の歴史教師が、反抗的な態度を取るイーサン・ホークを中心としたクラスの生徒たちに、個人的な体験に基づく「歴史=物語」を語り、歴史から「学ぶべきもの…
以前は少なからず反発を感じていた映画だった。一つはトム・リプリーがアラン・ドロン演じる美青年から中年のデニス・ホッパーに変わったこと。しかもカーボーイハットを被ったあの妙なスタイル。そして、ヴェンダースだ、ニコラス・レイだ、サミュエル・フ…
『ユージュアル・サスペクツ』は、「犯罪者」の精神的葛藤を見事に描き切ったネオ・ノワール映画の傑作である。だからある意味この映画を紹介するのは、容易い。例えば中条省平が「フィルム・ノワール」の定義として述べたことを引用すれば事足りる。すなわ…
現代アメリカのハイスクールを舞台に展開されるシェイスクピアの悲劇『オセロー』。現代風俗──ドラッグやセックス──にどっぷりつかりながらも、シェイスクピアの翻案に相応しい陰惨な雰囲気と悲劇的な色彩を帯びている。もちろん原作の存在をある程度斟酌し…
このチープさ、このバカバカしさ、このくだらなさ……まさに感動的だ。この映画が好きな「あなた」、ぜひ友達になりましょう!と、思わず叫んでしまいたいくらい、まったく僕のツボな映画。愛すべき、本当に愛すべきB級コメディ、マジで「ズーランダー・ファ…
シェーンベルクの『ナポレオン・ボナパルトへの頌歌』を聴きながら、このレビューを書いている──BGMはとても重要だ。演奏はもちろんピエール・ブーレーズ&アンサンブル・アンテルコンタンポラン。ブーレーズには新旧二つの録音があるが、僕の好みは1998年録…
三人は大学の同じ寮に住んでいる。女好きの男スチュワート(スティーブン・ボールドウィン)は、アレックスという女(ララ・フリン・ボイル)が好き。でもアレックスは男好きの男エディ(ジョシュ・チャールズ)が好き。で、エディはスチュワートが好き。三人…
滝本誠氏によるポピー・Z・ブライト『絢爛たる屍』(文春文庫)の解説を読んで奮い立った、ブライトに負けてらんないなと。というわけで、デイヴィッド・クローネンバーグ監督『イグジステンズ』のレビュー。ゲイ・ポルノでは、アヌスを舐めること──つまり"…
イタリア、ボローニャが舞台のシリアル・キラーもの。特異な家庭環境に育った若い男が、自分と同じくらいの大学生を殺害し、全裸にし、被害者のアイデンティティを盗む──つまり被害者そっくりになる。一方、その犯人を追うのが女性というハンディ(同僚の男…
面白かった。スリリングだった。エキサイティングだった、確かに『メメント』より映像的に地味だけど、僕はこっちのほうに惹かれる。何より「推理小説的」に素晴らしい。イヤリングやハンマーといった小道具が十分に生かされている。張り巡らされた伏線も見…
これはメチャクチャ好きな映画だなあ。しかも文句なしの傑作だと思う。それなのにあまり映画ファンに言及されないのはまったく解せない。コメディ・タッチだから? ティーンズ映画だから?言わせてもらえば、コメディは最も芸術的センスが必要なものだし、こ…
主人公は私立探偵。富豪の老婦人からの依頼。失踪した若い娘。グロテスクなまでに腐り切った人間の欲望。都市の暗部。そして意外な犯人像……。これはもうロス・マクドナルド的「アメリカの悲劇」のパターン/パロディに他ならない。しかしここで扱われている…
真っ青なシャツにハニーブロンドのヘアが映える。高級スーツに身を纏ったガイ・ピアーズは実にクールだ。一方、白いボクサーショーツ一枚で、引き締まったタトゥーだらけの肉体を晒しているガイ・ピアーズもたまらない。この映画では、そんなハンサム・ガイ…
IMDb のプロットキーワードを追っていくだけで、映画『リプリー』の内容はほとんど言い尽くされるだろう。例えば homoeroticism 、homosexual 、closeted-homosexual 、gay-interest と同性愛に関連したキーワードが四つもあることから、この映画において「…
詐欺師たち(グリフターズ)という「陽気なマイノリティ」のコミカルでトラジックなコン・ゲーム。原作はノワール作家のジム・トンプスン、脚本はドナルド・E・ウェストレイク、ということで面白くないわけはない。チープでドライであっけらかんとした暴力…
パトリシア・ハイスミス的静かな狂気を湛えた作品。ブライアン・シンガーの長編第一作であるが、さすがに面白かった。ストーリーはわりあいシンプルで、 ワイリー・プリッチャー(ロン・マークエット)という謎めいた男がアメリカの田舎町を訪れ、ケーブルテ…
原作はパトリシア・ハイスミス? いや、スティーヴン・キング。だけれども、この男 VS 男の心理ドラマはほとんどハイスミスでしょう。原作は読んでないが、弱みを持つ男同士の葛藤に惹かれたんじゃないかと思う、ゲイの監督ブライアン・シンガーは。主役二人…
夥しく氾濫するゲイ・アイテム。主人公の一人であるジョンの部屋に貼ってあるアンディ・ウォーホル『ブロウジョブ』のポスターからゲイ・クラブ風音楽、Tシャツの図柄、ケツワレサポーターまで様々なシグナルがこの映画の中で明滅している。そのシグナルを…
上空から見下ろす都市の形態は無表情な図形の集積。まるで何かの配置図、あるいは色彩を失ったモンドリアンの絵画のよう。そんな幾何学的な、あるいは記号でしかない都市風景を映しながら、フィリップ・グラスの音楽が響き渡る。シンプルかつノスタルジック…
マシュー・モディンが出演している映画はハズレがない。まあこれは僕がマシュー・モディンが好きなので、タイプの男優が出演している映画はいいに決まっている、もっと言えば、グッド・ムーヴィーの条件は男優で決まる、という私的な必要条件を満たしている…
同じジャン=ジャック・ベネックスの話題作『ディーバ』や『ベティー・ブルー』よりも、この『青い夢の女』を僕が買うのは、やはりそのミステリー仕立ての凝った設定と強烈なブラック・コメディゆえにだ。オープニングのチェンバロとヴィオールを使用した印…
だしぬけに、サンバが始まる。こともあろうに、サンバがだ。あらゆる性関係が暴露され、エゴイスティックなゲームが予想される暗い破局へと、そして誰もが敗者へと導かれそうになるグルーミーな映像の後にだ。そのとき、こともあろうに、だしぬけに、サンバ…
主人公の青年は、男性(たぶん彼の恋人たちであろう)の射精の瞬間の顔をカメラに収めコレクションしている。写真は確かに男性のエクスタシーを「狩猟」したものであるが、しかしそれらは苦しみに顔を歪め死んでいった男たちのコレクションにも見える。写真…
長さ4分という超短編。タブーを知らないアンファン・テリブル(少年少女たち)の性的なゲームを扱ったもので、オゾンならではの独特の感覚にギョッとさせられる。性体験の告白(=ヴェリテ)、少年同士のキス(実行=アクション)、足を舐めたり(アクショ…
8分のアートフィルム。2000年1月1日、ミレニアムの朝。だから何? とオゾンは「何も起きない、平凡な」記念すべき朝を描く。いつものようにベッドで目を覚ました男女のカップル。男は全裸でアパルトマンを歩き、隣のビルでセックスをしている男女を覗き、フ…
巨匠ティント・ブラスへの尊敬は足りない。絶対的に足りない。あの『カリギュラ』にしても『サロン・キティ』にしてもヴィスコンティに負けないくらい豪奢で気高い精神性を放っている。ただ、ヴィスコンティはキッチュすれすれの様式美で映画を「芸術」足ら…
映像に淫し、音楽に淫する。フェリーニの映画を観て、僕たちが淫することができるのはこれくらいであるが、古代ローマ人は、全てに渡って生活が淫していた。素敵だ。歌に笑にセックスに。まるで毎日がゲイ・クラブ&ハッテンバのノリ。映画は、ブロンドの美…