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怪獣とプロレスをするウルトラマンの前史、というわけで敬遠──というか見くびっていた『ウルトラQ』であるが、いくつかのエピソードを見て、これは面白い、と素直に脱帽した。そこには、どこか懐かしいモダンな日本と科学信仰に対する健全な批判が描かれてい…
何の予備知識もなく、アマゾンプライムでの視聴がもうすぐ終了する映画リストに入っていた、というそれだけの理由で何気なく──手の筋肉が反射的に動いたかのように──クリックして観た映画、それがこの『パトリック 戦慄病棟』だ。いわゆるB級ホラーなのだが…
映画の冒頭、ブレンダン・フレイザー演じるデヴィッド・グリーンは埃っぽい寂れた町のカフェで、仲間たちから仲間たち同士ならではの荒っぽい祝福を受けている。荒っぽい連中であるがゆえに表には出さないが、それでも感傷的な別れのニュアンスがそれぞれの…
横溝正史に開眼したのは実はつい最近で、それまでは、子どもの頃に見た映画&テレビ版の『八つ墓村』あたりの印象を、子どもの頃に感じた印象のまま、ずっとそういう感じの小説なんだと勝手に了解していた。不必要に人が殺され、不必要に死体が毀損され、不…
トム・クルーズは好きな俳優なので、そのことを中心に映画『ザ・ファーム 法律事務所』の感想を気楽に書こうと思った。しかし、その中のあるエピソードのことを書いているうちに、それが何かと何かをつなぎあわせ、それによって様々な思いがよぎり、キーを打…
映画『ダ・ヴィンチ・コード』を今頃になって観た。10年以上前に公開されたヒット作で、ダン・ブラウンの小説もベストセラーになっているので、ミステリーであるが内容をある程度明かしながら以下に映画を観た感想を。人類史上最大の謎を解く!映画『ダ・ヴ…
15分足らずの短編だけれども、オゾンの才能が十二分に発揮された見事な作品。グルノーブル映画祭グランプリをはじめ多くの賞を獲得した。「短編の王者」に相応しいポエティックで小気味良いコメディだ。とくに印象的なのは、『8人の女たち』で「振付師」と…
貞操帯をしろと? 赤十字に参加しろと?ローマ帝国は笑いと歌で世界を征服したのよ。ヒモと娼婦のカップルが帝国を支配する、ハイル・ヒトラー 久しぶりに観たのだが、やはりティント・ブラスはすごい。豊饒で放恣で過剰な映像によってナチスのポルノ性を暴…
舞台はスペイン、セビリア。作家志望でクロスワードパズル作成者の青年シモン(エドゥアルド・ノリエガ)に、警告めいた挑戦メッセージが届く。クロスワードパズルに「敵対者」という言葉を含ませろ、と。するとこの「言葉」に触発されたかのように、奇妙で…
低予算、B級ホラーの帝王ことロジャー・コーマン。『アッシャー家の惨劇』は言うまでもなくエドガー・アラン・ポウ原作であるが、どことなくB級の香りが……と言いたいところだが、ヴィンセント・プライスの熱演を始め、なかなか趣のある映像に仕上がってい…
クールな映像にクールな音楽、そこにクールな男=マット・ディロンがいれば傑作の条件を楽々とクリアーできる。このトライアングルが崩れると、ガス・ヴァン・サントの映画はどうも面白くない。『ドラッグストア・カウボーイ』は、そのトライアングルが見事…
うゎー、アガサ・クリスティが読みたくなった。あの「感じ」「様式」がたまらない。登場人物のほとんどに動機があるように「見せる」ところなんてまるで『ナイルに死す』みたいだし、懐古趣味は『バートラム・ホテルにて』、悲劇的な因縁は『鏡は横にひび割…
英語のタイトルは "Through a Glass Darkly" 。ヘレン・マクロイのドッペルゲンガーを扱った推理小説『暗い鏡の中へ』の原題と同じで、これは新約聖書から取られている(フィリップ・カーにも『鏡のおぼろに映ったもの』という同じ原題"Through a Glass Dark…
「物語」を語るところから離れて(Words are very unnecessary)、場面と場面の繋がりが切断されて(Come crashing in)、沈黙が支配する(Enjoy the silence by Depechemode)。映画はワンシーン=ワンショットで「その世界」を構築する。 人生の問題の解決は、…
ま、ゲイのガス・ヴァン・サントが「ストレート」を売りにした映画をつくるわきゃないな。なんといってもカメラがエロティックに舐めまわすのは、ホアキン・フェニックスのスキニーな裸体の方だし。女の自意識過剰とそれに振り回される男の間抜けぶり。それ…
ミシシッピーという南部の町を舞台にしたせいか、名物の宗教(狂信)と保安官をきちんとプロモートすることを忘れていない。宗教のプレゼンテイターはイヤなおばさんタイプのグレン・クローズ、保安官はハンサムで優男タイプのクリス・オドネル。もちろん僕…
まさしく詩。その語調は繊細、動的、抒情的、そしてときに冗談めいたアイロニーが飛び交う。「語調」とは映像のニュアンスであり、音楽の語り。ポーランド出身のイェジー・スコリモフスキ監督は、この映画で、青春という儚くも輝かしい「イルミネーション」…
アラン・パーカーによるシリアスな社会派ドラマ。脚本のオリバー・ストーンによるグロテスクな誇張があるとしても(ジョルジオ・モローダーの煽るような音楽も)、この映画は実話に基づいている。そしてこの映画が封切られて後、トルコとアメリカでは容疑者…
優美このうえないシャーリイ・ジャクスンの小説を、『スピード』『ツイスター』の監督が撮ると、こうなる。つまり、「幽霊」を「実体化」させ、派手に暴れさせる。これは映画として「見せる」場合、仕方ないのだろう。ジャクスンの小説もヘンリー・ジェイム…
殺人の観念はしばしば海の観念、水兵の観念を呼び起こす。ジャン・ジュネ『ブレストの乱暴者』(澁澤龍彦訳、河出書房新社) まさしく正典、Gay Canon だ。ジャン・ジュネの小説をR・W・ファスビンダーが映画化したこの作品は、ゲイ・キャノンと呼ぶに相応…
ラスト、カメラが上空から幾何学的な形態の墓地をすうっと駆け抜け、そこにマーラーの交響曲10番が流れる──それだけで、もう、感無量だ。死んだ画家が残した「私を愛する者はリモージュ行きの列車に乗れ」という、謎めいた遺言に従った人々のドラマは、そ…
女性の魅力にはついては無頓着な僕ではあるが、この映画でのニコール・キッドマンは美しく非常に魅力的だった。スリムな姿態、すらりと伸びた手足、そして透き通るような白い肌。時代もののドレスをエレガントに着こなし、「この世のものと思われない」独特…
こんな賑やかで楽しい映画は、是非、ジェンダー/セクシュアリティなんていう「色眼鏡」を外して観ていただきたい。とにかくストーリー良し、音楽良し、コメディ・センス良し、そして男のセンス良し、と言うことなし!ビジネスエリートのアドリアンはゲイ。…
モノクロームってこともあるだろうけど、あまり「イタリア」って感じがしない。映し出される景色は殺風景な場所ばかり選ばれ、街並みも冷たく人工的なモダーン建築で構成された無国籍風──まるでウルトラセブンの<第四惑星>を彷彿とさせる。そして、ドラマ…
英語のタイトルは "See the Sea" 。海のイメージを美しく捉えたこの作品に相応しい。もちろんフランス語の原題 "Regarde la mer" も、美しい響きを持っている。しかもどこか幻想的で神秘的なニュアンスを感じる。それはこの "Regarde" という言葉を聞くと、…
コロッサス、カッコイイ! サイクロップスは──大好きなキャラだけど──今回は、ウルトラセブン『史上最大の侵略』のアマギ隊員みたいな役で、ミュータント側に犠牲が出てしまった(さよなら、そしてありがとう、ジーン)。ミスティークは相変わらずだし、今回…
同性愛結婚OKのカナダならばこそ、「異性愛/同性愛」をテキトーに「対象化」「分析化」しても、PC(ポリティカル・コレクト)的にOKだろう。で、これは「異常な」「異性愛映画」だ。 大女優の娘ビビアンは、25歳の企業家。しかし、ブティックの経営…
ジャンニ・ホルト演じる若き司祭は、なかなかハンサムだ。ライナス・ローチ演じる司祭(アントニア・バード『司祭』)と同じように犬顔で、華奢な体をシックな僧服で覆っている──そう、僧服はセクシーな男性の制服なのだ。(そういえば、『Our Trespasses』…
これぞ「ハリウッド映画」。 強烈な皮肉と適度な内輪(映画)ネタが抜群に面白い。しかも、展開がスムーズなので、映画的「教養」やメタな構成がぜんぜん鼻につかず、心地よく映画「それ自体」を楽しめることができる(いや、ジュリア・ロバーツやブルース・…
インデペント系の映画情報サイトindieWIREに、監督マックス・マコウスキー のインタビューが載っているように、この映画も、見るからに予算が掛っていないインデペンデント系。そういったことも考慮に入れると、出来の良い作品かどうかは一様に判断し難いが…